向かない嗜好
日々、色々なものをかいている。
曲を書いて、小説や脚本を書いて、絵を描く。
そうして私の時間は消費されていく。
曲を書き始めたのは三年前、中学二年生のとき。
最初は男性が歌う前提の曲しか書いていなかった。
それしか書けなかったのだ。憧れたロックスターは男性が多いから。
椎名林檎やアヴリル・ラヴィーンも当時から大好きだったはずなのに、なぜか男性の声で再生していた。
男性ボーカルのバンドを作ろうと決めて、それを当たり前だと思っていた。
そんな私が女性ボーカル、自分で歌うための曲を書き始めたのは去年から。
バンドで出演したライブハウスのイベントで時間が余って、ボーカルの悪ノリでスピッツの弾き語りをさせられた。
メンバーと共に楽屋に戻ると、例のNANAかよ先輩に「自分の曲歌えばいいのに」と言われた。
彼は何も考えていなかっただろうけれど、私の中で何かがストンと落ちた。
ああ、自分で歌ってもいいのか…
もちろん作曲時やボーカルにデモを送る時には自分で歌っていたけれど、それを作業以外で行うことは考えもしなかった。
その夜から私は“自分の曲“を書き始める。
脚本を書き始めたのは今年度から。1人用と2人用のコント風短編劇を書いている。
登場人物は全員男性だ。なぜかそれしか書けない。
大学に入ったら演劇サークルか何かで同世代の男性2人を口説いて、実際に演じてもらおうと思っている。
私は台本を書いて演出をして、時々レアキャラみたいな感じで出られればいい。
だけど私はステージが好きだ。
スポットライトに、マイクに、客席に、喝采に、どうしようもないほど魅せられている。
いつか我慢できなくなって、自分が主人公を演じる脚本を書くのだろうか。
音楽を作るときと同じように。
その時をひっそりと楽しみにしている。
いっそ、男の人になりたいと思う。
私がやりたいことは、表現したいことは、そのイメージは、私の中でほとんど男性の姿で描かれている。
自分には、この趣味嗜好は向かないらしい。